上求菩提、下化衆生

仏教用語に「上求菩提、下化衆生」(じょうぐぼだい、げけしゅじょう)というものがあります。上求菩提とは菩薩が悟りを求めること、下化衆生とは菩薩が法を説いて人々を迷いから解放し悟りを開かせることです。

仏教が日本へ採り入れられた当初の理由は、先端文化の吸収であり、深い哲学の学びであり、国家鎮護のためであったように思います。そして鎮護国家の祈りはやがて、為政者の治世のためだけでなく、人々の幸せを願うものになってきたのだと思います。多くの人の幸せを願い、万民に良い生き方を示す宗教にならなかったら、それは宗教として多数の人から支持されないと私は思うのです。

奈良の仏教、お寺は人々のためになっているでしょうか。歴史的、文化的に価値の高い伽藍や仏像を保存し次の時代へ伝えることは大変重要な責務だと思いますが、民衆に仏様の考え、生き方を広めているでしょうか。それを考えるために、奈良のお寺が広く一般の人々に参加を呼びかけている公開講座がどの程度開催されているのかを調べてみました。

調査対象は、「隣山会」というグループを結成しています南都六大寺(東大寺、興福寺、薬師寺、唐招提寺、西大寺、法隆寺)、それに元興寺と大安寺の二寺を加えた八大寺です。

南都八大寺の公開講座の開催状況

南都八大寺の公開講座の開催状況は2011年7月16日現在の各寺のホームページで見る限り、次の通りです。

奈良で開催 他の地域で開催
定例開催 夏季講座






東大寺 管長・長老法話
・ほぼ1回/月
なし 東大寺東京講座
・毎月1回
興福寺 佛教文化講座
・毎月第2土曜日
なし 文化講座(東京)
・毎月1回
薬師寺 まほろば塾
・年1回
奈良塾
・ほぼ毎月
 第3日曜日
縁日法要講話
・毎月8日
唯職講
・毎月第4土曜日
暁天講座
・8/8~10
まほろば塾(中部)
・年1回
東京塾(東京)
・1回/3カ月
ミニ塾(中部)
・ほぼ1回/2カ月
ミニ塾(広島)
・ほぼ1回/2カ月
唐招提寺 開山忌記念講演
・年1回
なし なし
西大寺 なし なし なし
法隆寺 文化講演会
・春1回、秋1回
夏季大学
・7/26~29 
なし
元興寺 是心会(瞑想指導)
・毎月第2日曜日
なし なし
大安寺 なし なし なし

南都八大寺は結束して下化衆生の取り組みを

「下化衆生」と言う言葉は「上求菩提」の対句ですから、「より良いもの求める」との対比で「下を化す」という表現になっていますが、これを上から目線の表現と考えるべきではないでしょう。皆で良い生き方をしていけるように、先に何が良いことか分かった人はそれを皆に広めましょうという意味だと思います。

以前(2010年11月13日)の『鏡清澄の最新情報』の記事「奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム」に参考添付しました文書のように、私は「南都八大寺セミナーの常時開催」を提案しています。是非奈良の寺がそれぞれに多くの人々の心の支えになる教えを発信して行って欲しいと思いますし、できればバラバラに講座を開催するのではなく、南都八大寺が連携し、まとまって世間に「奈良での心の講座」をアピールして行って欲しいと思っています。

東京で開催されている「南都法話会」

地元の奈良では南都八大寺が連携した講座はほとんど開催されていないのですが、実は東京で奈良のいろいろな寺の若いお坊さんが順番で一般の人に「奈良の心」を話す会が開催されています。東京日本橋にあります奈良のアンテナショップ「奈良まほろば館」の2階で行われていますので、会は「南都法話会 in奈良まほろば館」と名付けられています。ほぼ1~2カ月に1回の開催です。

このような寺々の連携した取り組みが、寺のある地元の奈良で頻度高く開催され、人の心のあり方や生き方に良い影響を与えて行って欲しいです。