開花が遅かった今年の桜

今年(2012年)は日本の多くの地域で桜の開花が遅くなりました。バスや電車の窓から観た奈良の桜も1週間から10日ほど遅かったように思います。そして今年奈良の桜で特徴的だったことは、開花から七分咲き頃までの桜の花びらがとても濃い桃色をしていたことです。花芯も赤みが強かったように思います。冬がとっても寒かったせいでしょうか、それとも開花時期が遅かったためでしょうか。

今年は仕事の合間を縫って、大和文華館、薬師寺、県立図書情報館前の佐保川、吉野の桜を観に行きました。

大和文華館の滝桜

大和文華館は奈良市西部の近鉄「学園前」駅から徒歩10分弱のところにある美術館ですが、ここの庭に枝垂れ桜で有名な福島県三春町の滝桜があります。厳密に言いますと、滝桜の種子から育てた苗木を植えたものです。

大きく成長した大和文華館の滝桜は私が観に行ったとき、ほぼ満開でした。瀑布のように桜の花が上から落ちてくる感じを奈良で味わうとともに、本家の滝桜がある三春町に思いを馳せました。

薬師寺の淡墨桜

薬師寺の玄奘三蔵院伽藍には本坊寺務所前に岐阜県・根尾の淡墨桜があります。こちらは満開前の状態に行きました。花びらが小さめで色は白っぽいです。親の木である根尾の淡墨桜は生命力旺盛な木ですが、根尾も薬師寺も淡墨桜の花はどこか薄幸な感じがします。かつて読んだ宇野千代さんの小説『薄墨桜』のイメージが残っているからかもしれません。

本坊前の木の根元近くに「淡墨桜(薄住桜)」と彫られた石碑が建てられていますが、その側面には継体天皇の歌が刻まれていました。

「身の代と遺す桜は薄住よ 千代に其名を栄盛へ止むる」

なお、薬師寺には根尾の「淡墨桜」の西側に、福井県越前市の花筐公園の「薄墨桜」も植えられています。こちらはまだ若木ですが、次第に大きく成長していくでしょう。

県立図書情報館前の佐保川両岸の桜

よく利用させていただいている奈良県立図書情報館の前には佐保川が流れていて、その両岸には桜の木が沢山植えられています。今が最も樹勢盛んな年代のようで、ソメイヨシノが満開の花をモコッモコッと山のよう付けていました。川べりを走っている男の子がとても小さく見えるほどの圧倒的な量の花で、見応えがありました。

川岸で花見の宴をしている人もいましたが、広々とした図書情報館の広場で腰を下ろし弁当を食べている人が多かったです。

吉野の桜

予約していた近鉄特急で吉野へ行きました。昨年はすでに花が散ってしまっていたという4月14日に行ったのですが、今年は上千本の開花がまだこれからという感じでした。いつも早く咲く吉野水分(みくまり)神社の枝垂れ桜も蕾でした。午前中は雨が残っていたのですが次第に天気が回復し、中千本、下千本と変化に富んだ吉野のヤマザクラを楽しむことができました。快晴、満開の吉野はさすがに素晴らしいですが、霧の中の桜と寺社もとても魅力的だと思いました。