唐招提寺でも行われている写経

写経と言いますと薬師寺が有名ですが、実は唐招提寺でも写経をしています。以前は特別な方だけが写経会に参加できたようですが、最近は一般の方々にも寺のホームページで広く参加を呼び掛けています。

唐招提寺の写経の特徴

<写経の目的>

写経の目的は、経を書き写すことによって仏の教えを学び、自らの行動に反映して、他の人々にも良い影響を与えていくことでしょう。このことは、写経の手本の冒頭に書いてあります、漢文書下し文の「写経観念文」からおおよそ理解できました。

<写経勧進の目的>

唐招提寺が写経をオープンにしたのは、鑑真和上坐像のお前立(まえだち)を造ろうと決心したためと思われます。両者は時期的にほぼ重なりますし、写経会の名称も「鑑真大和上御影像造立結縁写経会」となっていますから。

<写経会の時期と場所>

唐招提寺の写経会は、例年11月17日に開催されていました。しかし、ごく最近で私が知っています唐招提寺の写経会は、昨年(2011年)の10月末と今年の4月中旬に行われました。私の気付いてないもので他にあったかもしれませんが、それほどの回数は行われていないと思います。私は昨年の10月末の写経会に参加しました。

写経会の参加は事前申し込み制になっていて、会場の収容人数を超過する場合は希望日時の調整が行われます。

写経の場所は、毎年開山忌の3日間しか一般公開されないと言われています御影堂です。あの東山魁夷さんの襖絵がある広い寝殿の間に座り机が並べられていて、そこで写経をします。寝殿の間には椅子席がありませんでしたが、別室に椅子席を設けていたように記憶します。

なお、写経料は般若心経1巻1万円です。

<写経の内容と仕方>

写経会場へ入る際に紙製のマスクのようなものが渡されます。正式には覆面軌というそうです。丁子を口に含み、香で身を清め、覆面軌をして席に着きました。

写経をする般若心経の手本は細い折本になっていて机の左手にあり、経を書く紙の下には手本がありません。紙には桝目の罫線代わりに雲のような模様が横一線に何列も描かれています。これまで下書き手本でしか写経をしたことのない私としては、「これは容易ならざることになったぞ」と思いました。

覚悟を決めて、手本の一文字、一文字をしっかり見て、文字の抜けが発生しないよう十分に注意して書き始めました。隣の行の何という文字の左側に今度のこの文字は書くのだという具合に確認しながら書いたおかげで、なんとか書洩らしなく仕上げることができました。時間は下書き手本の写経に比べて五割増しくらいかかりました。

書き上げた写経は鑑真和上坐像が安置されています厨子の前の机に納めました。残念ながら厨子は開いてなかったですので、鑑真和上坐像を拝むことはできませんでした。しかし、一所懸命書いた写経を和上はあの目で見ていてくださるでしょう。

<写経手本に書いてあった五戒の説明>

写経の手本には、般若心経の他に五戒の説明が書かれてありました。「戒とは人間が人間として守らなければならない、法律以前の根本規範」と述べ、不殺生戒(ふせっしょうかい)、不偸盗戒(ふちゅうとうかい)、不邪婬戒(ふじゃいんかい)、不妄語戒(ふもうごかい)、不飲酒戒(ふおんじゅかい)の五つの戒についての説明をしています。不偸盗戒とは物を盗んではならない、不妄語戒とは嘘を云ってはならないということです。

<写経の後の喫茶>

写経終了後、別室で抹茶が出ます。唐招提寺の軒丸瓦と鴟尾の形をした二つの干菓子が付いていました。また、「鑑真大和上御影像造立結縁写経」と書かれた書と唐招提寺の写真が印刷されたカレンダーを記念にいただきました。