秋田県仙北市

仙北市(せんぼくし)は秋田県の東部中央にある市です。市のエリアには日本一の深さを誇る田沢湖や乳白色の露天風呂が人気の乳頭温泉郷、そして桜で有名な角館(かくのだて)があります。

角館は秋田の佐竹家の分家にあたる佐竹北家の城下町でした。現在も江戸時代の武家屋敷が数多く残っていて、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。その角館へ二泊三日の旅をしました。

武家屋敷通りの枝垂れ桜

南北に伸びた道の両側に小さな側溝があり、黒板塀の武家屋敷が並んで建っています。三分咲きから五分咲きの枝垂れ桜が庭の方から塀を越えて外へ垂れ、桜色の花が黒い塀に映えていました。角館に到着したばかりのときは、まだちょっと桜には早かったかなと思ったのですが、初夏を思わせる好天で花はみるみる開いていきました。

角館の桜は、京都の公家の姫君が佐竹北家へ嫁ぐときに京都の祇園の桜を持ってきて、この地へ植えたそうです。桜の枝垂れがそよかぜにゆっくり揺れるのが優雅に見えるのはそのためでしょうか。

武家屋敷を見学したり、黒板塀と桜を写真に撮ったりして武家屋敷通りを歩いていくと、最近ではとんと見なかった真っ赤な円筒型の郵便ポストが立っていました。私は嬉しくなりました。江戸時代の武家屋敷、昭和時代の郵便ポスト、そして現代の多くの観光客という三時代が一緒に目の前にあったからです。

夜桜も良かったです。花がライトアップされ、その向こうの夜空には満月がありました。桜の香りも漂って、なにかしら妖艶な雰囲気が感じられました。

桧木内川の桜

武家屋敷通りの西側には一級河川の桧木内川が流れています。この東岸の堤には昭和初期にソメイヨシノが植えられ、現在は2キロメートルくらいの桜並木となっています。川の上流には残雪をかぶった山並みが青空にくっきりと見え、とても綺麗です。

小学校低学年と思われる2人の子供が川岸を駆けて行きながら「お母さん。早く、早く」と呼んでいる姿が微笑ましかったです。

落ち着いた武家屋敷ホテル

宿泊したホテルは以前からここへ泊ってみたいと思っていたホテルです。外見も内装も武家屋敷の黒板塀の雰囲気が取り入れられていて、とても落ち着きがありました。ホテル内のイタリアンレストランの味も良かったです。桜の時期の角館はすごい人出で、なかなかスムーズに良い食事を食べられないのですが、このホテルでの食事は待ち時間も少なく美味しいものを食べられました。

また、角館で食べたお菓子で印象に残っていますのは「もろこし」です。小豆の粉と砂糖で作られたお菓子で、口に入れるとサクッと砕けて香ばしさと甘さが口の中に広がりました。「諸々の菓子を越える菓子」だから「諸越」(もろこし)と呼ばれるようになったという説があるそうです。