1、クイズの問題

次の銘柄のお酒3種すべてを醸造販売している府県は下記6府県のどこでしょう。

銘柄・・・吉の川、大和川、奈良萬

都道府県・・・A:奈良県、B:新潟県、C:福島県、D:徳島県、E:兵庫県、F:大阪府、

2、クイズのヒントもしくはヒッカケ

奈良県と徳島県には吉野川が流れています。

兵庫県は日本酒の生産量が都道府県単位でトップです。

奈良県と大阪府には大和川が流れています。

3、正解は

正解は奈良県と思われる方が多いのではないでしょうか。

奈良県には吉野川も大和川も流れ、奈良萬という銘柄には奈良という言葉が付いていますから。

また、新潟県と思う方もいるはずです。新潟県長岡市には全国的に有名な「吉乃川」(吉の川ではなく、「の」が漢字の吉乃川)というお酒がありますから。

しかし、奈良県も新潟県も正解ではありません。正解は福島県です。

「吉の川」は酒造家の当主の名前(吉郎次)から銘柄名が付けられていますが、「大和川」と「奈良萬」は酒造家の祖先が奈良から福島県の会津地方へ移住してきたことに銘柄名のもとがありました。

4、徳一菩薩

平安時代の初め頃、奈良から会津へ移住した僧侶に徳一(とくいつ)菩薩と呼ばれる人がいました。徳一菩薩は、最澄と激しい仏教論争をした人として仏教関係者には知られていますが、一般にはあまり馴染みがありません。奈良の東大寺もしくは興福寺出身の僧侶で、会津の磐梯山(ばんだいさん)の麓へ行き、仏教を広めた人です。

磐梯山は西暦806年に大噴火し、広い地域で被害が出ていました。噴火の翌年の807年に徳一菩薩が慧日寺(えにちじ)を現在の磐梯町に開いていますので、被害に打ちひしがれた人々を徳一菩薩は励まし、復興活動に尽力したのだろうと推測されます。

また、磐梯山は元、「天に掛かる岩の梯子」の意味の「いわはしやま」と呼ばれていて、登山道沿いに小さな礼拝施設がありましたから、山岳信仰と仏教が結び付いたのではないかと言われています。比叡山よりも都から遠い、陸奥の山で仏道修行をしたのだろうと言う人もいます。

慧日寺はその後、大伽藍を持った寺となり、東北の仏教布教の拠点となったのですが、歴史の荒波の中で衰退、廃寺となってしまいました。

5、復興された寺、復元された慧日寺金堂

寺は人々の熱意によって「恵日寺」という寺号で明治の後半に復興されました。そして現在は、平安時代の遺構が「慧日寺跡」という史跡公園になり、金堂と中門が復元されています。

また、慧日寺跡には徳一廟と言われる小さな建物が野山の静かな場所に建っていて、中には五輪塔があります。徳一菩薩のお墓と伝わっています。