④東日本大震災と仏教

第4部の講師の方々の話およびレジメに書いてあったもので、印象に残ったことを列挙します。イ)の大谷徹奘師の話は、かつてNHKテレビでも放映されたと聞いていますので、知っている人も多いのではないでしょうか。

イ)大谷徹奘師(法相宗大本山薬師寺執事)

  ・被災地に入り、津波と火災によって破壊された街を目の当たりにした。あまりの悲惨さに涙も出なかった。

  ・その時聞えたのが「ここに生まれなくてよかった」という自分の心の言葉だった。

  ・一人前の僧侶のつもりでいたが、自分の(いたらなさと)無力さをしらされた。

  ・(大震災の被災という)まったく経験のない世界の中では、自分の学んで来た仏教をどう生かしたらいいのか分からなかった。

  ・うつ状態になったが、「ここで逃げれば、次も逃げるぞ」と思い、役に立てない自分だと知りつつも被災地へ向かった。

  ・被災者とどんな言葉や態度で寄り添えばよいか、これが、一番思い悩んだ事だった。

  ・被災しなかった人も、被災した人も、それぞれが相手の重荷にならぬよう、自分が出来ることは自分でする。それを被災の中で生きる方々に伝えることができるのが、仏教であり僧侶だと思う。

 ロ)金澤 豊氏(龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員)

  ・災害復興支援における宗教者の役割やその独自性を考えた時、宗教者に「被災した地域の宗教者を支える」という役割を提案する。

  ・何が支えになるのかというと、資金面と精神面の二つの要素である。

  ・地元住職から立場上、檀家に弱音を吐くことはできないが、外部の宗教者に対しては「同業者だから話せる」という声を伺った。

  ・遺族を支える地元宗教者を、来援宗教者が支えるという意識を持つことが求められる。

 ハ)安部智海氏(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)

  ・本願寺では、現地のボランティアとともに、仮設住宅にお住まいの方を一軒一軒訪問して、お住まいの方のお気持ちを丁寧に受け取る活動(「仮設住宅居室訪問活動」)をしている。

  ・(被災して)苦悩に直面し、解決方法が見つけられないとき、無条件に抱きとめてくれる存在に、どれだけ救われることだろうか。

  ・宗教(とりわけ仏教)は、苦悩に対する解答として存在している。