① ヨーロッパの教会に多い聖書の話の絵や像

ヨーロッパの教会には聖書に出てくる話の絵や像が沢山あります。

例えば、ヴァチカン市国のシスティーナ礼拝堂の「天井画」です。「アダムの誕生」や「楽園追放」、「大洪水」など旧約聖書の有名な話がミケランジェロによって描かれています。

また、フィレンツェのサンジョバンニ洗礼堂の東の扉には聖書の話が浮彫の像で表され、「天国への門」と一般に言われています。そしてドイツには、ケルン大聖堂に「バイエルン窓」と呼ばれるステンドグラスがあり、聖書の話の画像が光り輝いています。

その他、日本では知られていない教会に行っても、天井そのものや壁に掛かっている額の中に多くの聖書の話の絵が描かれています。

② 奈良の寺にある仏教の話の絵や像

奈良には沢山の寺があり、仏像や曼荼羅、釈迦来迎図というものは多いのですが、仏教の話の絵や像は少ないように思います。

少ない中で、仏教説話の絵や像が参拝者に展示されているものを挙げると次の通りです。

イ)壷阪寺の仏伝レリーフ『釈迦一代記』

ロ)薬師寺の回廊に掲示の『釈迦八相図』

ハ)薬師寺西塔の初層にある『釈迦八相』のうちの4像

ニ)法隆寺の五重塔の初層にある『塑像塔本四面具』(北面の涅槃像が有名)

ホ)法隆寺の玉虫厨子の『捨身飼虎図』

上記のうちイ)とロ)は写真撮影が可能ですので主なものを画像として当ホームページに掲載します。

イ)では、レリーフの全体的雰囲気が伝わるもの、「釈迦誕生の図」、釈迦が人生の苦しみを知って悟りを求めて城を出ていく「四門出遊の図」、悟りを開く「成道の図」です。これら以外にもいろいろな釈迦の話が浮彫像となっています。

ロ)については、以前は八相全部の絵が掲示されていたのですが、現在は東塔の解体修理のためでしょうか、4つの絵のみを観ることができます。

なお、ホ)の『捨身飼虎図』は、1つの絵の中に、服を脱ぎ、崖から身を投げ、虎に食べられるという、時間の異なる3つの場面が描かれています。

③ 絵巻物

仏教の話の絵として、他に絵巻物があります。素晴らしいものなのですが、こちらは特別の展覧会などがないとなかなか全体を観ることができず、身近なものとは言えません。

・元興福寺が所蔵していた『玄奘三蔵会』(現在は大阪の藤田美術館蔵)

・唐招提寺の『東征伝絵巻』

・朝護孫子寺の『信貴山縁起』

④ 絵と像に感じる、キリスト教と仏教の布教姿勢の違い

ヨーロッパの教会で聖書の話の絵や像を多く目にするのは、キリスト教が、教えを民衆にできるだけ知ってもらおうと絵を描き、像を造り、身近に展示したのが理由ではないかと私は思います。

一方、日本の仏教は、有難いもの、救いを願うものとして仏像が位置付けられ、仏教の教えの内容をかみ砕いて多くの人に理解してもらおうという考えが少なかったように感じます。

仏教、仏の教えとは良い生き方の教えだそうですから、それを広めていこうという気持ちを大切にし、仏教の話を分かり易く、もっと身近に触れられるようになると良いなと思います。