①奈良県の「漢方のメッカ推進プロジェクト」

6月7日に奈良フェニックス大学(市民大学)で「奈良の薬の歴史と漢方のメッカ推進プロジェクト」という講義がありました。

講師は奈良県知事公室審議官で漢方のメッカ推進プロジェクト担当の方です。私も聴かせていただいたその講義の内容は、大きく分けると次の3点です。

  ・奈良と薬の古い関係

  ・漢方薬と薬用作物(生薬)

  ・漢方のメッカ推進プロジェクト

聴講した中で特に興味深かったのは以下の事柄です。

イ)漢方製剤等の原料となる生薬のうち、国産は全体の約10%で、中国産が約80%、その他の国が約10%。

ロ)プロジェクトの最重点作物はヤマトトウキ。ヤマトトウキは他の地域のトウキより品質が良い。

ハ)プロジェクトとして、「生薬の供給拡大→漢方薬等の研究・臨床→漢方薬等の製造→漢方薬等の販売促進→漢方の普及」という産業振興の全体像を描き、その実現に取り組んでいる。

ニ)プロジェクトの関係者としては県、大学、農家、製薬会社、薬販売店、観光業者などである。寺は関係者となっていない。


②唐招提寺の薬草園復興プロジェクト

唐招提寺を開いた鑑真和上は、中国から日本へやってくるときに多くの薬草・薬木を持ってきました。

それらを栽培し、施薬を行うなどして、日本の医薬発展に大きな貢献をしました。

唐招提寺の境内の西北エリアには以前、第八十一世長老の故・森本孝順(もりもときょうじゅん)師の要請で造られた薬草園がありました。

しかし金堂の平成大修理の際に、仏像の修理所をそこに設けることとなり、平成11年(1999年)薬草園は閉鎖されました。

薬草園の薬草・薬木は岐阜県にある薬草苑「神薬才花苑」に預けられ、以来そこで育成されています。世話をしているのは現地の「薬草友の会」の皆さんです。

「薬草友の会」のブログ『よろこび・しあわせ・ゆめ』によれば、唐招提寺の閉鎖されていた薬草園が19年振りに復興されることになったとのことです。

鑑真和上が日本にもたらしてくれた恩に感謝し報いたいという「薬草友の会」の皆さんの喜びが、そのブログの言葉から強く胸に伝わってきます。

古来、寺は民衆を病気などの苦しみから救うことに取り組んで来ました。唐招提寺の薬草園の復興がいつ着手され完成するかまだ分かりませんが、薬草園の復興に寄り、民衆の心身が健やかになるようまたひとつ寺院が取り組んで頂けるのは嬉しく有難いことだと思いました。

また、仏都・奈良として寺院が「漢方のメッカ推進プロジェクト」の一翼を担うことを出来れば期待したいです。