谷村新司と奈良

歌手の谷村新司さんの曲に『三都物語』というものがあります。京都、大阪、神戸の三つの街が歌われていて、奈良は出てきません。

しかし、谷村さんは奈良県から奈良の宣伝役として重用されています。これまで、奈良県知事との懇談の様子が県の新年の広報誌冒頭に掲載されたり、奈良に関するフォーラムのスピーカーとして招かれたりしています。

また、昨年(2009年)の唐招提寺・金堂平成大修理の落慶法要には3夜連続して金堂前で公演し、今年行われた平城京遷都1300年祭では公式テーマソング『ムジカ』を制作して歌っています。

なぜ、奈良県が彼をそれほど重用するのか。私は次の二点がその理由ではないかと考えます。

一つ目の理由は、谷村さんのお父さんが奈良県宇陀郡の御杖村(みつえむら)出身でありますことです。地方の人的繋がりは強いものがあるのだろうと思います。

二つ目は、谷村さんのヒット曲『昴−すばる−』が鑑真和上の日本渡航を扱った映画『天平の甍』と関係していることです。ニッカウヰスキーのCMイメージソングとして『昴−すばる−』は作られたのですが、そのCMに使われた画像は映画『天平の甍』のものでした。

谷村さんは、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝さんの挑戦心や鑑真和上の熱い想いを胸に感じて、曲を作ったように思います。

『昴−すばる−』と鑑真和上

『昴−すばる−』の歌詞をよくよく読んでみますと、鑑真和上をイメージさせる言葉があります。

「目を閉じて何も見えず」

「荒野に向かう道より 他に見えるものはなし」

「我が胸は熱く 夢を追い続けるなり」

 荒野も海も果てしなく広いですし、荒野は渡航することの困難な荒海も想像させます。

谷村新司の本『階(キザハシ)』

谷村さんは作詞作曲して歌うだけでなく、本を1冊書いています。タイトルは『階(キザハシ)』です。

その本の第6節「柿の木に寄り添って」は御杖村が舞台になっていて、親から子へ大切なものを伝えていくことが描かれています。

本の中で谷村さんは、大切なものを音に託しているのかもしれません。音楽で代表させているのかもしれません。そのような想いがあってミュージック、MUSIC、『ムジカ』を作ったのではないかと考えます。

なお、第4節の「糸の物語」には京都の祇園、富山の八尾とともに、前回の「鏡の最新情報」で取り上げました沖縄県石垣島の川平湾(かびらわん)が出てきます。